8月29日(土)日記文学会シンポジウムの要旨 その1

 8月29日(土)13時半から早稲田大学で開催されるシンポジウムの要旨をご紹介します。開催の詳細はホームページあるいは前掲のブログ記事をご参照ください。

 

基調講演 三角洋一

      中世文学における『建礼門院右京大夫集』の位置

       ――中世日記紀行文学の文体のバラエティにおいて


 中世日記紀行文学は、ジャンルとしても確固とした内実をそなえ、また文学的に優れた作品を数多く輩出している。たとえば男性作者の筆になる藤原隆房『安元御賀の記』『艶詞』、源通親『高倉院厳島御幸記』『高倉院昇遐記』、鴨長明入道『方丈記』、作者不明の『海道記』『東関紀行』、飛鳥井雅有『春の深山路』などがあり、女性作者の手になる阿仏『うたたね』『十六夜日記』、中院雅忠女とはずがたり』、日野資名女『竹向が記』、宮仕えの記録に徹する『弁内侍日記』『中務内侍日記』などもある。それらはさまざまな文体を駆使しており、表記史的にもとりどりなところがある。

 『建礼門院右京大夫集』の位置づけを考えるにあたっては、作者の右京大夫にとってかかわりがあろうがなかろうが、多くの特色ある作品と照合してみることで新たに見えてくるものがあるかもしれない。大きな展望のもと、ささやかな問題提起を試みたい。