第89回大会要旨②

『花園天皇宸記』における歌論

                              中央大学 小野泰央

 『花園天皇宸記』正中二年(一三二五)十二月二十八日の条と元弘二年(一三三二)三月二十四日の条には、花園院の歌論が示され、その主眼は「雅正之道」を標榜することであった。同様のことは、同所に言及されている『文筆眼心抄』(『文鏡秘府論』)や『詩人玉屑』における詩論と、『為兼卿和歌抄』における歌論にも確認することができる。

 『為兼卿和歌抄』には、その「雅正」と関連づけて、「景物につきて志をあらはさむにも、心をとめ、深く思ひ入る」として、景物に向かって志を示すことを論じるが、そのことも、『文鏡秘府論』「南」「論文意〈文意を論ず〉」に「置意作詩、即須凝心目撃其物〈意を置きて詩を作るには、即ち心を凝らして其の物を目撃すべし〉」とあり、『詩人玉屑』「詩法」「白石詩説」にも「体物不欲寒乞、一意中有景、景中有意〈物に体すること寒乞ならんことを欲せず、一意の中に景有り、景の中に意有り〉」とある。花園院が賦した『風雅集』漢序に『詩人玉屑』と同様の理論が示されていることは、さらにその関係を敷衍するものであった。

 『花園天皇宸記』にはまた伏見院や花園院本人の御幸が頻繁に記録され、その御幸には四季の景物に感じて突発的に起こる場合があって、さらにそこに詩歌の会が行われたことが示されていることは、『為兼卿和歌抄』などの歌論に基づいて、実際に景物に接しながら作詩詠歌が行われていたことを示している。『花園天皇宸記』は、当時の有職だけではなく、京極派の歌論とその体現を記録する場でもあった。

第89回大会要旨①

讃岐典侍の愛の形―敬愛と恩寵―

                         元大阪府立高校教諭 山下太郎

 『讃岐典侍日記』(以下、『日記』とも)は、堀河帝に典侍として仕えた、讃岐典侍こと藤原長子による、女性仮名日記である。女房の立場で書いた日記、すなわち女房日記としては、『紫式部日記』に連なる作品である。もっとも、『紫式部日記』に書かれているのは、一条帝の中宮藤原彰子であり、天皇ではない。

 また、『紫式部日記』は彰子中宮の出産を記述するが、『讃岐典侍日記』は堀河帝の死を記述する。死者の追憶を記述する点で、『讃岐典侍日記』は、『和泉式部日記』を継承する。しかし、前者と異なり、後者は愛人の死そのものを直接に記述するわけではない。また、和泉式部と帥宮敦道親王には、相互に思い合う恋愛感情を基盤とした性愛関係があったが、讃岐典侍と堀河帝との間に、そのような感情があったかは、『日記』を見る限り不明とせざるを得ない 。『日記』には讃岐典侍と堀河帝との贈答歌は記載されていない。和泉式部と敦道親王は互いに「同じ心」を求めあうが、讃岐典侍が「同じ心」を求めるのは、生前の帝に仕えて「同じ心に偲びまゐらせむ人」(跋文)であった。作品本文の読みを通して、讃岐典侍の堀河帝を思う愛の形を探りたい。

第89回大会について

会員のみなさまには、日記文学研究誌第28号とともに、第89回大会の案内をお送りしております(今週末か来週初めには着くかと存じます)。その骨子は以下のとおりです。

 

日記文学会第89回大会開催案内

 

第89回大会を下記の要領にて開催いたします。会員のみなさまにおかれましては、ぜひご出席いただきますようお願い申し上げます。

 

                                            記

 

日  時:2026年8月29日(土)14:00~17:20(予定)

                      ※受付は13時50分開場

場  所:早稲田大学早稲田キャンパス14号館604教室

 

     委員の方は13:00~委員会を行います。会場は上記と同じです。

 

大会次第:(時間進行はあくまでも目安で変更の可能性があります)

14:00~14:05  開会の辞

14:05~15:05  研究発表①

讃岐典侍の愛の形―敬愛と恩寵―

                        元大阪府立高校教諭 山下 太郎

15:05~15:30  休憩

15:30~16:30    研究発表②

       『花園天皇宸記』における歌論

                              中央大学  小野 泰央    

16:45         総会

17:15~17:20    閉会の辞

 

訃報

 本会の代表委員を長年にわたりおつとめになり、日記文学研究を

中心に大きな足跡を残された守屋省吾先生が、さる五月十五日に

お亡くなりになりました。

 すでにご葬儀はご家族で執り行ったとのことです。

 ここに心より哀悼の意を表し、長年のお導きに深謝申し上げます。

 

                        日記文学会事務局

 

(川村裕子先生から本日、事務局宛にお知らせいただきました)

お詫びと訂正(第89回大会)

第89回大会の開催通知をハガキで会員のみなさまにお送りしました。

大変申し訳ありませんが、一か所誤りがございます。

開催日が

    8月29日(金)

とありますが、正しくは

    8月29日(土)

です。

ご迷惑をおかけいたしますが、訂正をお願いいたします。

 

            日記文学会事務局 福家俊幸

 

 

第88回大会の開催場所について

第88回大会 1月31日(土)14時~(13時50分開場)

      早稲田大学早稲田キャンパス 14号館401教室 

      下記のキャンパスマップをご参照ください。

      https://waseda.app.box.com/s/gsx693d8fj8v8b5zz6ii20nc7js0p3pz