畠山大二郎氏の近刊『平安朝の文学と装束』

 畠山大二郎氏の近刊『平安朝の文学と装束』(新典社・2016年2月)をご紹介します。多くの平安文学に関わる研究者、愛好者は、畠山氏といえば装束、とすぐに連想するのではないでしょうか。これはよく考えてみると、凄いことで、畠山氏が独自のフィールドで研鑽を積み、一家をなしてきたということに他なりません。ご本人は多分おっしゃらないでしょうが、その道程には多くの苦難があったものと推察されます。  
 本書は畠山氏のエッセンスが横溢しています。装束生地見本や寝殿造りの面影宿す大宮八幡宮での実装写真など、読んで、さらに見て、触って学べる書となっています。日記文学でいえば、『紫式部日記』の装束をめぐる二本の論考が掲載され、観念を越えた実感に迫る論で、それゆえに高い説得力を持っています。本書の公刊を寿ぐとともに、このすぐれた成果が広く手に取られることを願ってやみません。