斎藤菜穂子氏「『蜻蛉日記』安和の変直後の長精進と病臥」

 近時、『蜻蛉日記』の安和の変前後の記事について新たな知見を公にしている斎藤菜穂子氏の論考(「『蜻蛉日記安和の変直後の長精進と病臥―正五月と閏五月の対応―」「國學院大學紀要」第五四巻、2016年1月)をご紹介します。安和二年安和の変
巡る記事は政治的な記事を書かない『蜻蛉日記』の中で特異な位置にありますが、この論考では事件直後の五月と閏五月の記事とが対構造になっていることを指摘し、そのことを起点にして安和の変の記事が書かれた意義を探っています。同時代の読者との関係の中で、『蜻蛉日記』の表現を押さえなおそうとする視座は共感されるところ多く、まだまだ大きな可能性を秘めているのではないでしょうか。本誌17号掲載蜻蛉日記』中巻の「桃の節句」と「小弓」の記事について安和の変の直前に書かれたこと―」とあわせ読みたいところです。