12月17日(土)第71回大会要旨①
12月17日(土)の第71回大会研究発表会の要旨を掲載します。来聴歓迎です。
『蜻蛉日記』師尹五十賀屏風攷
早稲田大学大学院 荒井洋樹
当該屏風については、守屋省吾が上巻執筆の契機になったと指摘する(『蜻蛉日記形成論』笠間書院 昭和五〇年)など、『蜻蛉日記』の形成を論ずる上で重視されてきた。それは、屏風歌の詠進を依頼されたことは歌人として認知されたことを意味し、そのことを自負する気持ちが道綱母にあったとの解釈に基づく。以降、この屏風について言及する論は、ことごとくこの見解を踏襲しているといってよい。ただし増田繁夫は、屏風歌を詠進する歌人は多くが受領層であり、道綱母自身は快く思っていなかったと説いた(『右大将道綱母』新典社 昭和五八年)。歌の内容について詳細に論じたのは渡辺久寿だが(「『蜻蛉日記』研究ノート」『山梨英和短期大学紀要』二〇 昭和六二年一月)、あくまでも『蜻蛉日記』の枠組みの中での考究である。
本発表においては、当該屏風を屏風歌研究の側から取り扱う。すなわち、選定された歌題やその構成を検討し、屏風歌としてどのような史的位置にあるかを確かめる。もちろん屏風製作の背景にも言及する。そのうえで改めて、『蜻蛉日記』中においてこの屏風歌はどのように位置づけられているのかを論じたい。