「『更級日記』における『源氏物語』の浮舟」

 有馬義貴氏「『更級日記』における『源氏物語』の浮舟-孝標女らしき人とのずれをめぐって―」(「奈良教育大学国文ー研究と教育ー」2015年3月)は、先行研究を周到に押さえながら、『日記』の浮舟引用が『日記』に記された孝標女(孝標女らしき人)とは重ならず、むしろ「ずれ」ていく様相を丹念に読みこみ、その意味を問うた論考です。それは、孝標女らしき人のありようを相対化し、そのあやにくさを浮き彫りにするものと機能していると説いています。若い世代の新しい『更級日記』論として、注目されましょう。このテーマにはすでに多くの論考が積み重ねられておりますが、ここに新しい成果が加わったことを喜びたいと思います。