『新時代の源氏学7複数化する源氏物語』

2015年5月竹林舎から刊行された表記の書は、十二本の質の高い、興味深い論考を掲載していますが、その中の横溝博氏の論考「平安時代の『源氏物語』本文―物語は本当に“書写”されたのかー」は『更級日記』に多く言及し、日記文学研究にも重要な視座を提供しています。『更級日記』の記述から、当時の物語享受において必ずしも書写が無前提に行われるものではなかったとする視点は、現在の「常識」に対する重要な異議申し立てであると思われます。他にも有益な指摘が多々あり、必読の論文として、ご一読をお勧めします。