第73回大会要旨①

 第73回大会の発表要旨をご紹介します。まず最初の発表から、順次ご紹介していきます。

 応永本『和泉式部物語』の帥宮

                 國學院大學北海道短期大学部 渡辺 開紀

 
 

和泉式部日記』の序盤の記事に、帥宮が主人公「女」への二日目の訪問を躊躇する場面がある。ためらう理由の一つを、作品は「故宮のはてまでそしられさせ給ひしも、これによりてぞかし、とおぼしつゝむも」(三条西家本)と語っており、「兄宮がなくなる際までとやかく人においわれになった」(全講)という理解が概ね通説であろう。

ところで、当作品の有力異本の一つである応永本『和泉式部物語』は、この箇所を「こ宮の御はてまてはいたうそしられしとつゝむも」(京大本)としている。「御はて」は、一般に「一周忌」を意味することが多く、その場合、先に挙げた通行の解釈とは齟齬が生じる。加えて、文脈の含意も、故宮への弔意ゆえに時期を区切って行動を自重する帥宮の心理が語られていることとなり、故宮を反面教師に見立てて逃げを打つ姿を看取する従来の解釈とは、大きく径庭を置くものだったに違いない。

当作品の見所の一つに、主人公との交流を通して、帥宮の人物像がいかに変容していくかという点があるが、当該記事はその起点における性格づけを象徴する箇所であり、上述の相違は単に些細な本文異動では済ませられない意味を持つ。

応永本は『和泉式部物語』なる題号をも踏まえ、三条西家本よりも「物語的」であることが説かれ、昨今ではその点を標榜する向きも現れた。今回の問題が、そうした見方の理非を検討する一助になればよいと思っている。

第73回大会について

次回大会を以下のように開催します。
会員のみなさまにはあらためて書面でご通知いたします。
よろしくお願いいたします。

第73回日記文学会大会 

来聴歓迎

2017年12月9日(土)早稲田大学早稲田キャンパス16号館405教室
 運営委員会   13・00~14・00
 研究発表会   14・30~17・00
         応永本『和泉式部物語』の帥宮
           國學院大學北海道短期大学部 渡辺 開紀
                       
 【講演】日記文学性の生成 ―『蜻蛉日記』をひもときながら―
               山梨英和大学(非) 渡邊 久壽
 
 総会      17・00~17・45       
 懇親会 アットン 18・00~20・00

第72回大会も盛況のうちに終了しました①

 お陰様で第72回大会も盛況のうちに終了しました。今回は一之瀬氏、金井氏と続く、研究歴の長いベテランの先生方のご発表に、和歌研究で著名な高野氏のご講演と、大変盛りだくさんのプログラムとなりました。多くの会員や一般の方においでいただき、質疑も盛り上がり、とても有益な時間をすごすことができました。
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             トップバッターの一之瀬氏

第72回大会―あと4日になりました

  第72回大会まであと4日になりました。会員以外の方の来聴も歓迎いたします。会員のみなさまには、ぜひ多くのお知り合いや教え子にお声がけいただきますようお願い申し上げます。
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